発酵食品とは、身体への影響について

執筆者:箱﨑 由貴子
 今、再び注目されている発酵食品の特徴や身体への影響について紹介致します。和食が健康や美容に良いと言われている大きなポイントが実は「発酵食品」の多さと関係しているのです。それでは見ていきましょう。

世界から見る日本の発酵食品

世界にはどのくらい発酵食品があると思いますか?オセアニア、北南米の発酵食品はとても少なく、乳文化をもつ中東から欧州地域ではチーズ、ヨーグルトなど動物性由来の乳発酵食品が多いのに対して、古くから米を食べていた日本を含む東アジアから東南アジア地域では農水産物から作られる発酵食品が多くあります。

それぞれの国や地域の気候・風土に根差しており、日本ほど発酵食品が多い国は他にないでしょう。

天然のサプリメント『発酵食品』

日本には味噌、醤油、みりん、酢、漬物、納豆、甘酒、日本酒などの発酵食品があります。また、海外では前述したヨーグルトやチーズ、また、キムチやザワークラウトなどがあり、現在では日本の食卓にも並んでいます。

そもそも「発酵」とはどういうことなのか?と言うと、微生物の働きによって食品中のでんぷんやたんぱく質が分解されることを指します。それによって栄養素が消化・吸収されやすい形に変わるのです。

この過程で栄養価が高まり、抗酸化力もアップするので生活習慣病予防や老化予防、美肌にもつながると言われています。また、発酵することで保存性が良くなり、原料にもともとなかった風味や独特のおいしさや香りがプラスされ良いこと尽くしなのです。

発酵食品それぞれの力

食卓に出番の多い代表的な発酵食品が身体へどのように影響するのかを見ていきましょう。

味噌

蒸した大豆に麦麹や米麹と塩を加えて発酵・熟成させたものです。大豆に含まれるたんぱく質は、製造過程で麹菌の酵素によって分解され、アミノ酸に変化してうま味や風味の素となります。また、熟成の過程で褐色化するのですが、これは褐色成分のメラノイジンによるもので、抗酸化性が認められています。抗酸化性と言われてもなかなかピンと来ないと思うので詳しく説明させていただきますね。

大気中には約20%の酸素が含まれており、この酸素を利用して私たちは生命活動を維持しているのですが、酸素は外部からさまざまな刺激を受けて反応性の高い活性酸素に変化します。この活性酸素は細胞伝達質や免疫機能として働く一方で、過剰な産生は細胞を傷つけ、がんや心血管疾患、生活習慣病などさまざまな疾患をもたらす要因となるのです。

味噌の抗酸化性がどのように身体に影響するのかイメージできたでしょうか。また、伝統的な日本食である「ごはんと味噌汁」は一緒に食べることでお互いに少ないアミノ酸を補い合うことができ、栄養価的にもとても良いと言えます。

醤油

大豆と小麦で作った醤油麹に塩水を加えて発酵・熟成させて作ります。醤油には、濃口・薄口・溜り・再仕込・白醤油とありますが、どこのご家庭にもあるのが「濃口醤油」ですね。

醤油も発酵・熟成していく過程で褐色化し、味噌と同じくメラノイジンが生成し、醤油のうま味成分であるペプチドやアミノ酸も抗酸化性、抗腫瘍性などがあると研究報告されています。

漬物

漬物は製造方法によりさまざまな種類がありますが「発酵漬」について見ていきましょう。雑菌が生育しにくい3~10%食塩濃度下で漬け込み発酵を促して主に乳酸菌の働きによって発酵風味が作られます。代表するものは、すぐき漬、しば漬、赤かぶ漬、高菜漬、糠みそ漬などです。

この乳酸菌が身体にどのように影響するかと言うと、人の腸管内には沢山の細菌が生息し腸内フローラ(多種多様な細菌の集まり)を形成しています。その菌の集まりの中には有害なものや健康に役立つもの、どちらにも属さないものがあり、一定の好ましいバランスを維持することが大切で、その良好な状態に保つために乳酸菌を積極的に増やすことが良いとされているのです。ただ、漬物は塩分量も多いので食べ過ぎには注意しましょう。

ヨーグルト

牛乳を乳酸菌により乳酸発酵させて凝固したものです。朝食に取り入れている方も多いのではないでしょうか。乳酸菌の影響については前述した通りです。腸内環境を整えることで便秘が改善しやすくなり便秘が原因で起きる肌荒れやニキビが解消しやすくなる研究結果も出ています。

納豆

蒸した大豆に納豆菌を加えて保温、発酵させたものです。納豆菌が産生する酵素に血栓溶解効果があると言われており、納豆菌が作り出すビタミンK²は骨粗しょう症を予防し、動脈硬化の要因の一つとなる血管へのカルシウム沈着を予防し、また納豆を食べることで腸内のビフィズス菌を増加させ、悪玉菌を減少させる腸内環境改善効果もあると言われています。世界に誇れる日本ならではの発酵食品ですね。

それぞれの好みに沿った食が進み、海外の食文化を取り入れることが主流になっていますが、日本人の伝統的な和食を支える「発酵食品」の魅力が少しでも伝わったでしょうか。ぜひ毎日の食卓に取り入れてみて下さい!

参考文献

・機能性食品の基礎から臨床へ(フジメディカル出版)味噌の文化と機能性

・腸内細菌学雑誌22巻(2008)乳酸菌を利用したヨーグルトの皮膚機能改善効果に関する検証

・日本調理学会誌43巻(2010)日本食からみる発酵食品の多様性と日本人の健康

・日本食品工業学雑誌13巻(1996)漬物研究上の諸問題

・日本調理科学会誌41巻(2008)食品における乳酸菌の利用とその働き

・化学と教育63巻(2015)世界に誇る納豆

・日本乳酸菌学会誌13巻(2002)日本の漬物

・日本醸造教会誌(2017)発酵漬物における乳酸菌のはたらき

・日本醸造教会誌87巻(1992)味噌の抗酸化機能について

・厚生労働省ホームページ

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