人生100年時代に備える!高齢者の食事のコツとは
「もう、粗食が一番!」「もう、1日2食で十分よ」という声を高齢者から聞かれることがあります。でも本当にそうでしょうか?
実は高齢者を対象にした調査では、多様な食品をとっている方は、そうでない方に比べ筋力が保たれ身体機能が保持されやすいという事が分かっています。
筋力が低下し、歩行速度が落ち、転倒リスクが高くなれば寝たきりのきっかけとなります。高齢期になったからこそ「粗食」ではなく、いろいろな食品を積極的にとりましょう
【高齢になっても絶対にとりたい栄養素】
高齢になっても絶対に不足してはいけない栄養素の一つは「タンパク質」です。
タンパク質は筋肉・臓器・皮膚・毛髪などのカラダをつくる重要な栄養素です。主に、肉、魚、卵、豆類(納豆、豆腐など)に含まれます。
高齢者の中でも、体重減少している、寝たきりの方などはこの血液中のタンパク質(アルブミン値)が低下している事が多いです。
2020年版食事摂取基準では、高齢者のフレイル(虚弱、寝たきり)を防ぐためにタンパク質摂取の推奨量を引き上げています。注目すべき点は18歳でも75歳以上でもタンパク質の推奨量はほとんど変わらないということです。
高齢になると消化吸収能力はどうしても低下しますので若い人と同じくらい肉、魚、卵、豆類をきちんととって筋肉、臓器を健康に保っていく必要があるのです。
以下、2つがタンパク質を不足させないコツです!ぜひ実践してくださいね
☆食材が偏らないように、「朝は卵と納豆を 昼は魚を 夕飯にはお肉をメインに」などご自身のライフスタイルに合わせて1日の食事の計画を立てておきましょう!
☆タンパク質の1食の目安は、厚みも大きさも、指を除く手のひら1枚分です。この量を目安に、肉(薄切り3枚程度)魚(1切れ)卵(1つ)豆腐(半丁など)納豆(1パック)などを上手に組み合わせましょう!
【骨の栄養にも気遣いを!】
高齢になると骨密度が低下し、転倒による骨折が増えます。
加齢による骨密度の減少は止められませんが、食事から骨に必要なカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどをとることによって、骨量の減少を最小限にとめることはできます。体内のカルシウムの99%は骨や歯に存在しますが、残りの1%は血液などの組織に存在します。
この血液中に存在するカルシウムは生命の維持に関与する重要な働きをしているので、食事でカルシウムがとれないと骨からカルシウムを取り出し、血液中に取り込まれてしまいます。
そのため食事からのカルシウムの摂取が不足すると骨密度の低下を招きやすくなります。
骨の健康には、「カルシウム」というイメージが強いですが、実はそれだけでは十分ではありません。
健康な骨を保つためには
このカルシウムを骨に沈着させてくれるビタミンD(魚に含まれる) 骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンK(海藻、緑黄色野菜に含まれる)など様々な栄養素も必要です。
【様々な栄養素をとるコツとは!】
実は
筋肉、内臓をつくっているタンパク質も骨の栄養に重要なカルシウムも
色々な栄養素が相互作用をし、体内で消化吸収されます。
そのため、まずご自身の食生活を振り返り食品摂取の偏りなどがないか
確認することがとても重要です。
以下の10個の食品の中で1日にとれている食品は何個あるでしょうか?
- ① 肉
- ② 魚
- ③ 豆類(豆腐、納豆など)
- ④ 卵
- ⑤ 牛乳(乳製品)
- ⑥ 緑黄色野菜(人参、ほうれん草、かぼちゃなど色の濃い野菜)
- ⑦ 海藻類(わかめ、こんぶ、ひじき、のりなど)
- ⑧ いも類
- ⑨ くだもの
- ⑩ 油を使った料理
以上の10種類の食品の中で毎日7種類以上の食品をとれている高齢者は身体機能が高く保たれることが分かっています。多くの食品をとれている人ほど、多くのビタミンやミネラルを万遍なくとれているといえます。
そのため毎日どのくらいの食品がとれているか一度確認することがとても重要です。
【多くの食品をとる工夫をしましょう】
例えば、野菜がとりにくい方は冷凍野菜を使う
魚料理が面倒くさい方は鯖缶、ツナ缶、冷凍のつみれなどを常備する
お肉料理が苦手な方はソーセージやハム、冷凍のシュウマイやミートボールなどを用意する
海藻をとっていない方はのりや乾燥わかめを用意する
芋類がとりにくい方は市販のポテトサラダ、芋煮などを利用するなど
ご自身のとれていない食品を把握し、足りていなかったものを足していきましょう!
とはいっても張り切って、毎日食品10種類全部とろう!と頑張りすぎないでくださいね!
食事は毎日の事で生涯続きますし、なにより心の栄養にもなります。
なるべく簡便に工夫をしながら楽しんでおいしくいただきましょう!
【参考文献】
熊谷修ら. 地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連. 日本公衆衛生雑誌 2003; 50(12): 1117-1124.
新開省二. 高齢者の低栄養の現状とその予防. 日本医事新報 2012; 4615: 71-77.
吉葉かおり,武見ゆかり,石川みどり,他.(2015) 埼玉県在住一人暮らし高齢者の食品摂取の多様性と食物アクセスとの関連.日本公衆衛生雑誌. 62, 707-718
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